先日、久しぶりに大型書店で本を買いました。私は基本的に書籍の購入はアマゾン派です。知りたい分野のキーワードで検索すればすぐに関連本を教えてくれますし、書評が良かった本のタイトルがうろ覚えでも、瞬時に見つけ出してくれます。注文して早ければ翌日に手元に届きます。アマゾンさんがどれほど私の時間を節約してくれていることでしょう!
この利便性を理由に、すっかり足が遠のいていた「本屋さんに行く」という行為は驚くほど新鮮でした。なんだか懐かしくてフロアをぶらぶらしているうちに、買う予定がなかったコーナーにも足を踏み入れ、気がつくと買う本がバスケットいっぱいになってしまいました。寒い日で館内は暖房が効きすぎ気味、分厚いコートを着ていた私は汗びっしょり。仕事帰りで、持ち帰った書類がパンパンに入ったバッグがずっしり肩に食い込みます。パソコン画面でクリックして「買い物カート」に入れるのと比べて、バカバカしくなるくらい面倒だったのですが、お会計するときの気分、なんでしょう、この充実感。結局配送してもらったのですが、届いたダンボールを開けた時の不思議なワクワク感は、汗だくで本を選んだ苦労があったからこそなのでしょうか。
実は、なぜ書店に足を運んだかというと、2020年度からスタートする大学入学共通テストで英語4技能「読む・聞く・話す・書く」を測定するのに民間試験が活用されるということで、職業柄、じっくり現状を把握しておこうと思ったからです。多様な民間試験の形態やレベルを確認するには、ここはアマゾン検索ではなく実際に手に取って見てみようと思いたったのです。しかしその書籍数、想像以上でした。何年ぶりかに訪れた書店の英語学習コーナーはフロアの大部分を占め、天井まで高くそびえる棚2本のほぼ全面が英語学習本でびっしり埋まっていて、TOEICをはじめとする資格試験関連の問題集、参考書、攻略本は見た目でも膨大な数です。
驚きとともに反省した点もあります。よく「TOEICのスコアを上げたいのですが、オススメの本を教えて下さい。」と学生に聞かれるのですが、「自分のレベルに合った問題集とわかりやすい攻略本が一番。自分の目で確かめて選んで下さい。」と四角四面な助言をしてきましたが、これは不親切でした。あれだけの選択肢から1冊選ぶなんて!
かれこれ10年前になりますが、大学の授業や企業研修でTOEICやTOEFL講座を担当していたので、当時はよく書店でテキストを物色していましたが、今ほど膨大な量の英語学習本は並んでいませんでした。情報化が加速度的に進む昨今、質の良いデジタル教材もたくさん市場に出ています。さらにスマホで手軽にできるアプリも含めれば、学習方法はずっと多様で便利になったと言えます。
しかしながら、選択肢が増えて学習の効率が上がっても、日本人のTOEICスコアはまだ世界に誇れるほどのレベルに達していません。2017年のTOEIC リスニング&リーディングの国別平均スコアは日本517点で世界ランキング39位。韓国676点(17位) 、中華人民共和国600点(30位)と比べると見劣りしますね。
https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/pdf/Worldwide2017.pdf
TOEIC攻略法を徹底的に伝授する講師としては、私はもはや浦島太郎になりつつあるかもしれません。まぁ、そちらは専門家に委ねるとしても、最近気になるのは資格試験にみる日本人のリスニング力とリーディング力のギャップです。大学受験に向けて文法と読解中心の勉強をしてきたため、概して「日本人は英語を読めるが話せない」と考えがちですが、TOEICのスコア結果を見ると、リスニングよりリーディングのスコアが低い受験者が圧倒的に多いのです。今後は日本人の英語の読み書き能力こそが、発達し続ける情報化とグローバル化の時代にもっと試されることになる、そんな気がしています。
「10年ひと昔」と言いますが、新旧の移り変わりを感じるこの頃です。久しぶりに訪れた書店で感じたことを綴りながら、これから日本の英語教育がどこに向かって行くのか、ふと気になります。
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