早いもので、2019年がスタートした1月も終わろうとしています。ブログもすっかりご無沙汰してしまいました。最近、大学入試センター試験がありましたが、受験生の大敵インフルエンザが猛威をふるっています。今年は記録的に雨が降らない異常事態が続き、例年以上に受験生やそのご家族は感染予防に気を遣う時期ですね。皆様もお気をつけ下さい。
さて、そんなセンター試験直前1月17日の日経新聞夕刊に、松井彰彦教授が書いた面白いエッセイがありました。松井先生の専門分野は経済学のゲーム理論ということですが、ある大学の国語の入試で自分が書いた文章が出題されたので、嬉しくて問題を解いてみたそうです。設問は「著者の考えに最も近い答えを選べ」という4択問題です。ところが、なんと先生自身がその問題を解けなかったそうなのです!自分の考えが選択肢の中に含まれていないとのこと。ということは、出題した部分の自分の考えを作問者にうまく伝えられなかったからだ、と自省されたわけですが、たまたま大手予備校の現代国語のカリスマ講師の講義を聴いて「悩みが氷解した」そうです。
カリスマ講師は国語の試験をゲームになぞらえ、プレーヤーは著者、作問者、解答者の三人で、「解答者は作問者の意図を読み取ることが肝心」と説いたそうです。選択式の設問で著者の考えを当てさせる問題で正答を得るコツはかなり戦略的です。「わざとど真ん中の答えは外す。その上で周りに中心=正解から距離を変えて4つの文章を並べる。解答者が見つけるべきなのは、中心に一番近い文章だ。そして多くの場合、それは著者の文章とは異なる表現を使っている」ということです。なるほど。まるでTOEICの攻略法みたいですね。リスニング問題で、聞いた音と同じ単語が選択肢に含まれていたら、それは不正解 (distracter) のひっかけであることが多い、というのと同じです。そして、松井先生のエッセイは「お陰様で、ゲーム理論家なのに相手に自分の考えを伝えられないという僕の悩みは、相手の意図を読み取れないというものに変わった。」というお洒落なオチで締めくくられていました。
このエッセイ記事はまさに目からウロコでした。学生の頃、国語や英語テストで「筆者の考えを選びなさい」の選択問題が大の苦手だった私は、「筆者本人に聞いて見なければわからないはず」「古典文学であれば作家本人に聞くことはできないし」「生存している作家であっても、執筆当初から作品を書き上げた時まで同じ意図を貫いて書いたのかどうかだってわからない」という理屈っぽい言い訳をしながら、1つを選択できないのが常でした。そうか、そうだったのか!試験で高得点を取るために考えるべき視点は「書き手の意図」だけではなく「作問者の意図」なのですね。いやはや、ここまで行き着くのに何十年もかかってしまいました。入試と期末テストの真っ只中、学生の皆さん、作問者の視点から解答してみて下さいね。
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