先週、自分が勤務する大学の卒業式があった。毎年、時の流れの早さを複雑な気持ちで感じる日。爽やかなスーツ姿や華やかな袴姿の卒業生たちはキャンパスで見慣れた姿とは別人のように眩しい。「先生、お世話になりました。」と改まって挨拶するゼミ生。彼らに普段のやんちゃぶりはなく、ぐっと大人びた様子。もう4年が経ったのか。彼らがこんなに成長している間に私は衰退していると弱気になったりする。
ところで、大学の卒業式は英語では Commencement という。つまり「始まり」という意味で、日本語の「終わり」の語感とは真逆なところが面白い。卒業式のスピーチ (Commencement address) で心に残る有名なものに、2005年スタンフォード大学の卒業式でのSteve Jobsのスピーチがある。高校の教科書にも載るほど、若者に勇気を与える素晴らしい内容なので、私はゼミの授業で必ず一度はこの動画を学生と観ることにしている。中でも最初のパートの Connecting the dots(点を結ぶ)のくだりは、社会人として年を重ねた人の方が納得できる内容だと思う。
… you can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something – your gut, destiny, life, karma, whatever. This approach has never let me down, and it has made all the difference in my life.
https://news.stanford.edu/2005/06/14/jobs-061505/
「将来を見据えて点と点をつなぐことはできない。できるのは過去を振り返ってこれまでの点をつなぐことだけだ。だから現在の点と点がいずれはつながるのだと信じなければならない。直観、運命、カルマといったものを。この考え方に裏切られたことは一度もない。むしろこれが私の人生を大きく変えたのだ。」
Steve Jobs statue unveiled in Budapest
何十年前に大学を卒業してから作ってきた私自身のキャリアの「点」たち。通過点には常に挫折と迷いと偶然があった。たくさんの「点」ははっきりと繋がっているが、まだ終着にはしたくない。もう少し点を増やさないと。
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